2009年10月9日の手紙
2009年の手紙

 
 
 
 

ニャン太郎くんへ

 

考えてみると、この21年と8ヶ月とちょっと、あなたと離れたことがあるのは、

私が旅行に行った時くらいだね。

旅先でいつもニャン太郎くんが、今ごろどうしているだろうかと心配していましたが、

あなたは、ペットホテルのせまいケージの中でさびしい思いをさせてしまっていました。

ごめんね、今さら、だけど。

 

今、ニャン太郎くんが旅立って、家にいなくなってしまったのだけど

私は自分が旅に出ているような気がするのです。

あなたのいない家は、家ではないような気がするのです。

私は、あなたをさがして永遠の旅に出たような気がします。

 

いつかきっとまた会おうね。

 

ありがとう、大好きだよ。

 

 

 

2009年10月9日(正確には10日)

 

 

 
   
   
   
   
   

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この手紙を書いたのは、ニャン太郎のお葬式を終えた深夜でした。

日付はとっくに翌日になっていました。

私は、涙も出ずにただ呆然としたまま、家に着いたのですが、

まったく眠る気にもなれず、自分の部屋の机の前でぼうっとしていたのでした。

すると、どこからか一匹のハエが音も立てずに目の前に飛んできたのです。

いつもだったら、手で振り払ってしまうところですが、

この日はそんな気持ちになれず、ハエをぼんやりと見ていました。

 

「もしニャン太郎だったら私の手にとまってみて」

私は、ハエに頭の中で何気なく語りかけました。

すると次の瞬間、ハエは私の右手の甲にとまったのでした。

 

体を神様に返したニャン太郎がハエに体を借りて会いに来てくれたのでしょうか。

それとも命はすぐに何かに生まれ変わって、順番にいろんな生命の体に旅をするのでしょうか。

手の甲にとまったハエは、しばらくしてどこかへ飛んで行ってしまいました。

 

これは、ニャン太郎が旅立った夜のちょっと不思議な体験です。

 

 

 

 

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